デジタルシフトで注目される、ライブコマースの可能性

デジタルが主流の現在、顧客はテレビや雑誌といった旧来のメディアだけでなく、SNSや動画配信の情報を元に買い物の良し悪しを取捨選択、そして実際に購入するというアクションを起こしています。また新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続いたことによって、ECでの買い物が増加しました。そこで、リアルに会えない顧客と良好な双方向コミュニケーションを築くために注目されているのがライブコマースです。中国ではすでにライブコマースが主流となっていますが、日本でも徐々にこのライブコマース市場が拡大しています。ここで、ライブコマース先進国である中国の事例を見ながら、今後の日本におけるライブコマースにどのような可能性があるのか探ってみたいと思います。

勢いづく中国のライブコマース市場

ライブコマースとは、ECとライブ配信を組み合わせた新しい販売手法で、買い手はリアルタイムで売り手に質問やコメントをしながら商品を購入することができるのが特徴です。ライブコマースに関しては中国が先進国であり、日本の一歩先を進んでいます。KPMG税理士法人が発表したライブコマースに関するレポートによると、2019年の中国のライブコマースは4,338億元(約6兆9,408億円)もの市場規模を築いたとのこと。さらに2020年は1兆500億元(約17兆円)、2021年には2兆元(約33兆円)規模に拡大すると予測されており、この勢いに乗って日本でもこれからライブコマースが市場認知を得て、発展することが見込まれます。さらに、中国商務部は2020年上半期のライブコマースイベントの開催回数は1,000万回、ライブコマースで活躍するライバーは40万人、視聴回数は500億回、販売商品は2,000万アイテムを超えた、と発表しています。

なぜ、ここまで中国ではライブコマースが盛り上がりを見せているのでしょうか?2020年のライブコマース市場の急拡大はコロナ禍に伴う巣ごもり需要がブームを後押ししたとはいえ、コロナ禍が落ち着いたその先も、ライブコマースには商機がありそうです。その理由として、顧客側の視点で見ると以下の要因が考えられます。

エンターテインメント性のある購買体験

ライブコマースを行うには、ライブ動画配信のプラットフォームはもちろん、商品やサービスをライブで解説するライバーが欠かせません。ライバーは商品紹介をしたり、顧客からのチャットメッセージにリアルタイムで返事をしたり、場を楽しく盛り上げながら顧客の要望に応えます。そのため、顧客にとってライブコマースはリクエストに即時に対応してくれる頼もしい存在であり、同じ時間、瞬間を一緒に楽しむエンターテインメント性が魅力となっているのではないでしょうか。そのため、顧客に影響力を及ぼすKOL(キーオピニオンリーダー)と呼ばれるインフルエンサーや芸能人を起用する企業も少なくありません。ただし、そのような人たちには販売力はあるものの、高額な報酬などコスト面の課題があるため、現状はリテール企業の店長や販売員などが自らライバーとなるケースが大半を占めているようです。KOLや芸能人ほどの影響力はないものの、豊富な商品知識を持っているため、偽造品が多い中国では売り手による生の情報が信頼へと繋がり、結果購買に結びついているようです。

リアルタイムに双方向コミュニケーションができる安心感

ライブコマースでは直接、売り手と買い手がリアルタイムに双方向コミュニケーションを行うことができます。中国では、WeChatなどSNS上の口コミが最も信頼する情報源として知られていますが、ライブコマースはECでの購入に伴う様々な不安(サイズや色みは大丈夫か?偽物じゃないか?など)を和らげる、いわゆる口コミ機能のような役目を果たしています。これまでテレビショッピングもありましたが、そちらは一方通行のコミュニケーションでした。それがライブコマースではオンライン上での対話が可能となり、買い手の不安を瞬時に解消できるようになったことが、他の既存販売チャンネルに比べ優位性を持っているといえます。

・商品を直感的に理解し、短時間で購入できる

従来のECサイトでは情報が大量にあり、検索を辿って商品を購入するまでのプロセスに時間がかかります。多くの情報によって取捨選択に迷い、結果ドロップアウトする顧客も少なくありません。その点、ライブコマースは商品紹介だけでなく使い方や生産背景など細かい部分もリアルタイムで確認できるため、商品への理解度が早くなります。またリアル店舗でショッピングする体験に近いので、購入までの意思決定が早くなる傾向があります。

現在、中国のライブコマースの市場シェアトップ3は、アリババが運営するTaobao Live、そしてDouyin、KuaiShouと言われています。2019年の3社の合計売上は約4400億元(約6.7兆円)に達するほど大きな影響力を持っています。主に売れているのはアパレル、日用品、グルメ、化粧品などです。また、フィットネスや農業、自動車などの分野でも活用されています。

今後注目される日本のライブコマース

それでは、日本のライブコマース市場はどうでしょうか?実際、日本のライブコマース市場はまだ未知数、といったところですが、日本も中国同様、コロナ禍の影響によってECの利用率がこの1年で増えました。Shopifyの調査によると、今や、日本の消費者の42%がECで買い物をしているそうです。今後、リテール業界も消費者の買い物方法や外部環境の変化に合わせ、ビジネスの構造改革をしていく必要があります。そういった意味でも、ライブコマースがその一助になるかもしれません。

日本のリテール業界に絞った直近の事例では、ベイクルーズやシップス、ビームスが2020年春、コロナ禍真っ只中の時期にライブコマースをスタートしました。店舗で実際に顧客に接客している販売員が出演して質問に回答したり、身長別や体系別のスタッフが登場して着用感をイメージしやすくするなど、様々な取り組みが実践されています。バイヤーやデザイナーが直接商品への思いや背景を語るケースもあります。

15歳〜49歳の男女2万人を対象にしたマクロミルと翔泳社によるライブコマース実態調査(2019年7月実施)では、ライブコマース認知度は全体の約25%、またオンラインショッピングのためにライブ配信を観たことがあると回答した人は約19%でした。まだ購入に至るケースは中国には及ばないものの、ライブコマースを利用したいと回答した人が約24%いることから、潜在的なニーズはあるのではないでしょうか。他の販売手法に比べ消費者の体験や商品認識の訴求に高い優位性を備えているため、今後の伸び代には注目したいところです。

ライブコマース成功の鍵は、コミュニケーション

中国ではライブコマースの利用者はすでに3億人以上とも言われており、もはや一過性のトレンドではなく、リテール企業にとっても購入を促すための定番ツールになっています。ただ国によって顧客ニーズは異なるため、ライブコマースのスタイルは国ごとにカスタマイズする必要もあります。大多数を惹きつけるエンターテインメント化したパフォーマンスも魅力的ですが、日本ではパーソナライズされた1on1のライブ接客で、顧客と密度の高い関係性を築くことの方が合っているのではないでしょうか。実際、日本では予約ツールやビデオ通話のzoomを取り入れて、個別接客を行うアパレル、美容ブランドが増えています。

その際、重要なのはコミュニケーション。従来のECは文章と画像で商品を訴求していましたが、長い、難しい文章は顧客に好まれず、伝達に限界がありました。しかしライブコマースなら、売り手である販売員の言葉や行動の温度感を読み取れるため、思いが伝わりやすいという特徴があります。また、リアルタイムのコミュニケーションになるため、下手な映像の加工がなく、その点も顧客にとっては信頼感に繋がりやすいのではないでしょうか。

ここでのポイントは、商品スペックの話に終始するのではなく、顧客の悩みや課題を聞き、解決へと導く提案をしたり、顧客と販売員の間で共感が生まれるようなストーリーを展開すること。顧客が知りたがっている情報を把握し、顧客のエンゲージメントを高める工夫をすることが結果売上に貢献するでしょう。ライブコマースは、テレビショッピングなどと比べコストがかからないため、色々と試行錯誤しながら改善スピードを速めることが可能です。知名度を上げることなのか、売上を上げるためなのか、それとも顧客に買い物をもっと楽しんでもらうためなのか、などゴールを見定めて取り組むことも大事です。まだ日本では潜在的な可能性を秘めたライブコマースですが、顧客との良好なコミュニケーションを築くツールとして、この新しい接客体験を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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